ようこそ真実編集室へ。私が室長の騙り部である。以後お見知りおき願いたい。
さて早速だが、まず諸君に「真実」なる単語の意味を考えていただきたい。
……考えていただけただろうか。ではここにマイナーな部類に属する辞典がある。これで「真実」を引いてみよう。
【真実】 いつわりでないこと。ほんとう。まこと。
諸君が考えた「真実」と一致しただろうか? おそらく諸君の多くが一致しただろう。
次に「事実」の意味を考えて欲しい。……では今度は「事実」を引いてみよう。
【事実】 実際にあった事柄。ほんとうの事。真実。
これで「真実」と「事実」は同じ意味であると定義することができる。
しかし真実編集室では、この「真実」と「事実」を明確に区別する。以下に真実編集室での定義を紹介する。
【真実】 その個人が「事実である」と考えていること。主観。
【事実】 間違いないこと。いわゆる真実。客観。
お解りになられただろうか。では、さらなる理解のために二つほど例を挙げよう。
彼は三回、メロンパンを食べたことがあり、その三回とも直後に風邪を引いた。故に彼にとって「メロンパンを食べると風邪を引く」という事は「真実」である。
しかし「メロンパンを食べると風邪を引く」という事は「事実」ではない。だが、彼に限定するならば、それは「事実」である。
彼女の「漫画を読むとバカになる」という考えは、彼女にとって「真実」である。しかしそれは「事実」ではなく、また他の多くの者にとって「真実」ですらない。
そして「漫画を読むと漢字を覚えることがある」ということは「事実」であるが、彼女にとっては「真実」ではない。
どうだろうか。これでだいたい理解されたことと思う。
では「真実編集室」とは何なのか。一言でいえば「個々人が持っている真実を編集してしまおう」とするところである。
編集の意味は諸君もお解りになられるだろうが、一応引いておこう。
【編集】 材料を集め、“一定の意図のもとで”本や新聞などにまとめること。
すなわち、そういうところである。
なお、真実編集室での全内容について、諸君が何らかの影響を受けても、私たちは一切の責任を負わないことを、ここに明記させていただく。